ガツガツ食べていると、男性スタッフが控え室に入って来て座った。
 女の子専用の控え室に座って寛ごうとする、ボーイに違和感を覚えながらも、気にせずに食事を続けた。
【いつも思ってますけど、よしのさんて本当に美味しそうに、何でも食べますよね。】
 食事中に、よく知らない人に話かけられるの嫌い。     面倒臭ぇな………と思いながらも、ボーイさんの方を意識的に向かず
『あ〜、はい。』
 と答え、食事を続けた。
【息子さんがいるって、本当ですか?】
 うるせえ、面倒臭え。 私のプライベートを、なぜお前に話さないといけない?
『あ〜、はい。』
  能面のように、表情を崩さず答えた。
【マジっすか?  俺が息子だったら、自殺しますね・ゲラゲラ。   だって、母親がソープ嬢ですよ? ゲラゲラ。    勘弁してくれって感じで、恥ずかしくて自害ですよ自害・ゲラゲラゲラ。】
 一瞬にして、カルボナーラの味がしなくなった。
 凄くお腹が空いていたけど、食べられなくなって半分以上を捨てた。
 私は、そのボーイの顔を見ず、返事もせずに控え室を出た。
 お客様に、酷い言葉を投げかけられても、スルー出来る。
 お客様は、お客様。  ご自分のストレス発散の為に、私と過ごす時間を購入しているのだから、その90分・180分・270分…一日貸し切りで、どう罵倒されようが全然平気。
 殺されたりしなければ、全く平気。
 でも、まさか同じ店で働く男性スタッフに、ここまで見下されるとは思わなかった…
 …女の子達がいないと、ボーイという仕事は成り立たないのに…。
 
【あいつら、股を開けば金になると思ってるからよ・ゲラ。】
 奥歯を噛み締め過ぎて、奥歯が折れるかも…と思うくらい悔しかった・情けなかった・涙も出なかった………。
 私は沢山のお金が必要になり、この業界に自らの意志で入った。
 色々辛い事もあったけど、素晴らしいお客様や・素晴らしい女の子達とも出会えた。
 今、後悔はしていない。
 今だ、この業界に留まるのは、金だけの為にあらず。
 
 あれから何年経っても…………カルボナーラを食べると、あの日の脱力感が蘇る。
 だから、いつか美味しく笑顔でカルボナーラを食べれる日まで
 サヨウナーラ・カルボナーラ!    必ず、また会おう(^_-)-☆!